イコロを拠点にアイヌ文化伝承のあり方を模索しつづけたい

アイヌ文化に出会って、広めて、深めていく【語る人=イコロ人形劇 演出家・脚本家 遠州まさきさん】

アイヌ文化の発信と継承の拠点として、昨年オープンした阿寒湖アイヌシアター「イコロ」。そして、この春オープンした、古代オホーツク文化に触れられる、網走市の「モヨロ貝塚館」。北海道の厳しくも豊かな自然とともに生きた人々は独自の文化を創ってきました。時空を超えて私たちに語りかけるものは…。観て、聴いて、触れて、五感にうったえかけるものを感じてみませんか?イコロでアイヌの方々が演じる人形劇、その一作目は『ふんだりけったりクマ神さま』。アイヌ民話を人形劇に、と提唱された札幌大学の本田優子先生が、いくつか選んで下さったお話の中から決めました。動物の姿をした神様の中では一番格上のクマ神様が主人公ですが、ちょっと間抜けでユーモラス、人間味のある親しみやすいキャラクターに描かれています。人形を操るのは、これまでも古式舞踊の踊り手として活躍していたメンバーです。もちろん人形劇は初めてでしたから、人形操作から演じ方まで、新たな挑戦となりました。しかしそこは役者・アーティストですから、一度役を理解すると、演じる度にどんどん磨かれていくんですね。人形と演じ手が一つになるというのでしょうか。それぞれのキャラクターが舞台で輝きを増していくんですね。スタッフ、キャストみんなが、作品を大事に育てているのがわかります。そして、そうした想いが観て下さる方にも伝わっていると思います。今年はイコロの皆さんにとってうれしいことがありました。3月に開催された第27回倉敷音楽祭に招待され、『ふんだりけったりクマ神さま』を演じたのです。シアターイコロ以外で初めての上演だったのですが、演じる喜び、会場との一体感を深く感じることができ大きな経験となりました。イコロも二年目に入り、二作目となる人形劇の準備にとりかかっています。次の作品は、小さな小さな「ミソサザイ」という鳥の神様が主人公の物語。森を破壊し人と対立する荒熊に小さな鳥が立ち向かって行くお話です。故・山本太助エカシ(尊敬されるリーダー)が記した「カムイユーカラ」(平凡社文庫刊)に納められている作品がモチーフ。来年の春に初日を迎えるべく、脚本作りを進めています。アイヌ民話はどれも知恵にあふれ、自然に対する感謝、優しさが盛り込まれています。未来をになう子どもたちにも多く観てもらいたいですね。同時に我々作り手は、イコロを拠点に、文化伝承のあり方や発信の方法を常に模索し、阿寒湖の魅力を色々な形で広げていきたいと思っています。

 

写真1:アイヌ文化の発信と継承の拠点として、昨年オープンした阿寒湖アイヌシアター「イコロ」。

 

写真2:遠州まさき
札幌市こどもの劇場やまびこ座、札幌市こども人形劇場こぐま座の元専門指導員。イコロでは脚本、舞台監督も担当。
アイヌ民話に魅せられ、多くの物語を原作を大切にしながら人形劇で表現していきたいと語る。

何度も阿寒湖を訪れ、イコロのスタッフ、演じ手とともに作品を造り上げていく、その作業がまた楽しいと語る。

阿寒湖アイヌシアターイコロ
釧路市阿寒町阿寒湖温泉4丁目7-19 TEL 0154-67-2727

 

写真3:鶴雅ウィングス1階には精巧な木彫りをはじめとする伝統工芸、暮らしを伝える品々や書籍などがおかれているギャラリーをはじめ、アイヌアートガーデンなど、アイヌ文化の思想を取り入れた場所がいろいろあります。