木が語る。

工芸からアートへ。

森羅万象にカムイ(神)が宿ることを知っているアイヌの人々。創り出すどんな小さなもの…、生活の道具であっても祈りのためのものでも、装飾のためのものであっても、魂が備わっていることを知っていました。だから、心を込め、想いを込め、祈りをこめて大切にし、継がれてきました。巧みな技術だけではありません。先人への敬意、自然への感謝も時代を超え繫がっているのです。鶴雅ウィングスのエントランス、鄙の座のロビーなどに美しい彫刻が在るのをご存じでしょうか。阿寒湖を愛し、阿寒の自然に触発されながら創作を続けている、藤戸竹喜氏、瀧口政満氏の作品です。現在、北海道立近代美術館で開催されている「AINUART-風のかたりべ」でも、両氏の作品を観ることができます。同美術館主任学芸員の五十嵐さんに、アイヌアートについてお話を伺いました。

 

北海道立近代美術館 主任学芸員の五十嵐聡美さん


AINU ART 森の語り部

3月24日(日)まで北海道立近代美術館にて

開館時間=9:30〜17:00(入場は閉館30分前まで)休館日=月曜日

札幌市中央区北1条西17丁目 TEL 011-644-6882

アクセス:地下鉄 東西線・西18丁目駅下車 4番出口から徒歩5分バス JRバス、中央バス 道立近代美術館バス停下車 徒歩1分

 

時を越え、時空を超えて感じる風


若い頃に旅して阿寒のコタンで出会った、無心に熊を彫る青年。その姿にあこがれて、心の奥からわき上がる衝動のままやがて阿寒に移り住んだ瀧口政満さん。瀧口さんご自身が「木がイメージを伝えてくれるのです」と言うように、木の曲り、こぶ、個性が作品の一部となって、唯一無二の作品が生まれます。瀧口さんの作品には、どこか心温まる親密感があります。そこに吹く風を感じることができるでしょう。カムイによって与えられた木との対話が創り出す命、鼓動が聞こえるようです。

 

作品:想う(1967年 作家蔵)阿寒に移り住んで間もない頃の作品。

曲線が描く空気の動き、柔らかな風が心に吹き込みます。

 

彫刻家 瀧口政満氏

1941年2月18日満州奉天(現瀋陽)で生まれる。現在阿寒湖畔在住。

●個展、東京小田急デパート、東京日本橋高島屋などで数多く開催。

●鶴雅「森の美術館」、鄙の座など鶴雅グループに多くの作品収蔵展示。

 

 

 

 

作品:狼(2005年 作家蔵)鼻を高くして耳を開き、研ぎ澄まされた嗅覚と聴覚で

感じるものの気配を観る者も知りたくなる。絶滅したエゾオオカミの姿にも思える。

そしてその命を感じる。

 

彫刻家 藤戸竹喜氏

1934年8月22日旭川に生まれる。現在阿寒湖畔在住。

●鶴雅「森の美術館」、鄙の座に作品を収蔵展示。

数々の木彫り作品を制作、絶滅したオオカミや熊、

人物を写実に仕上げ全国にファンが多くいる。